愛猫の慢性腎不全は完治する?治療のあれこれ教えます!

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動物病院の看護師をしていると「猫の腎不全」はとても触れ合う機会が多く、ポピュラーな病気です。調子が悪いシニアの猫さんがきたら、まずは腎臓を疑って精査をするほど。でも飼い主さんからしてみればかけがえのない、この世にたった1匹しかいない大切な愛猫ですよね。そんな大切な愛猫が腎不全?ポピュラー?なんて言われてもなぜうちの子が!?と思ってしまうはず。言葉が話せない猫さんだからこそ、本人も飼い主さんも不安に感じるてしまうもの。安心材料を増やす意味でも、大切なのはまず病気を知ることです。そこで今回は猫さんの腎不全についてのあれこれをわかりやすくまとめてみました!

愛猫が慢性腎不全になる確率はどれくらい?


猫さんが将来、腎不全になる確率。それがどれほど高いかご存知でしょうか?
7歳以上のシニア期で約半数、15歳以上のハイシニア期に入るとおよそ80%の猫さんが腎不全になっていると言われています。実際に動物病院で勤務していても体感的なパーセンテージに差異はなく遺伝的な若年性の腎不全、中毒などによる急性の腎不全を除けば7~8歳辺りから腎数値があがっていき、ハイシニア期には重度の腎不全まで進行しているケースが多いです。シニア期以降の猫さんの死因第一位が腎不全であり、避けては通れない道と思っておきましょう。ただし!!ごくごくまれに20歳近くても全く腎数値に異常が出ない強者もいます…!!

初期症状はこれ!早期発見するために…


腎臓という臓器は、機能が損なわれると元に戻すことはできません。ですから腎不全はできるだけ早期に発見し手を打つことで、進行を遅らせることが最良の治療です。ただし厄介なことに食欲がない、痩せてきた、嘔吐する、動きがおかしい、など目に見えて症状が出るころには腎機能の半分以上が失われていることが多く、非常に早期発見が難しい病気でもあります。そこで常日頃から気にしておきたいのは【飲水量】【尿量】【尿色】です。腎不全の初期症状は飲水量の増加。元気も食欲もあるのにやたら水を飲む、おしっこの量が増えている、尿の色が水のように薄い、などの異変があったら危険サイン!実はこの症状が出ている段階ですでにかなり進行している可能性があります。速やかに動物病院にかかってくださいね。ちなみに一番確実なのは定期的な血液検査です。筆者はシニア期では年一回、ハイシニア期では年二回の血液検査をお勧めしています。


ヒシっ…おてやわらかにだにゃ。

慢性腎不全ってどういう病気?本人はどんな状態?


そもそも【腎不全】とはどういった病気かをご説明しておきますね。
腎不全とはその名の通り腎臓の機能が不全、つまりうまく機能しなくなる状態を指しています。腎臓には様々な機能がありますがその中でも最も重要なのが血液中の老廃物や毒素をろ過し、尿を生成、排出する機能。これが損なわれてしまうと体に毒素がたまり様々な症状を引き起こします。これをひっくるめて慢性腎不全と呼んでいます。わかりやすく言えば腎臓にあるろ過機、これが加齢と共に劣化しフィルターがつまりはじめ正常に機能しなくなっていく、という状態です。毒素が体内に溜まっている状態は猫さんにとっても非常に苦痛で体はだるく、常に気持ち悪い状態です。

発症してからどれくらい生きられるの?


聞きたいようで、聞くのが怖いこの質問。発症してからどれくらい生存期間があるのでしょうか。
慢性腎不全の発症からの余命期間は平均250日ほどと言われています。ただしこればかりは発見した時の進行具合、本人の年齢、治療の選択、様々なものが重なって決まるもの。
平均日数はあまりあてになりません。筆者が見てきた中でも数日で旅立ってしまう子から数年間頑張る子まで本当に色々なケースがあります。年齢が高くても飼い主さんの熱心な治療の甲斐あり食欲や元気を維持しながら長い期間、穏やかに過ごすことができる猫さんも沢山いらっしゃいます。

完治はするの?どんな治療方法がある?

  • 残念ながら猫さんの腎不全に完治は望めません。前述した通り失われた腎機能は元に戻すことができないためです。でも進行を遅らせることは可能です。代表的な治療は以下の何通りかあります。

  1. 内服薬
    腎不全の進行自体を抑制する薬剤(ラプロス)、尿への蛋白漏出を抑制する薬剤(セミントラ、フォルテコール)などを使用した内服薬での治療

  2. サプリメント
    腎不全に大きく関係する「リン」、このリンを吸着し濃度を下げるサプリメント(カリナールコンボ、イパキチン、レンジアレン、ネフガード等)を使用した補助的な治療

  3. 療法食
    腎臓への負担をかけるリンやナトリウムを抑えた腎不全専用の療法食を使用した治療。

  4. 点滴・皮下補液
    腎不全を起こした猫ちゃんは脱水を引き起こし、その脱水が更に腎臓に負担をかけるといった悪循環にはまっています。症状が重篤な場合には静脈点滴を入れ、血管からダイレクトに点滴を流すことで速やかに脱水を補正、症状を改善する治療を行います。また静脈点滴で症状が緩和されたとしても退院後に再び脱水を引き起こしてしまうため、その後は皮下に輸液を注入する皮下点滴治療を行います。皮下点滴の通院が頻回で困難な場合には自宅で飼い主さんが皮下点滴を行うことができるよう動物病院で指導するケースもあります。


治療にかかる費用はどれくらい?


気になる治療にかかる費用です。内服薬の価格や処方量は各動物病院によって差があるものの療法食、内服薬、サプリメント、皮下補液などで年間30万~40万円程かかってきます。また症状が重篤化した場合に行う入院しての点滴治療は1回あたり5万~10万円を想定しておきましょう。

治療をしない、という選択


では腎不全を発症した際、何も治療を行わない。という選択はありなのでしょうか?
これは飼い主さんが最終決定をするものです。ここからは筆者の個人的な考え方になりますが、基本的にはありだと思っています。ただし気持ち悪さなどの不快症状は一時的であっても緩和してあげた方がいいです。なので皮下点滴などの対症療法は積極的に行ってあげてほしいなと思います。その上で精査や内服、点滴治療は行わないというのであればそれはその猫さんと飼い主さんの形なのだと思います。
特に年齢が高い猫さんは、無理に療法食治療や投薬治療を行うとかえってストレスになってしまう事もあります。私たち動物医療に携わる側はあくまで症状を改善し、一日でも長く生きることができるような治療プランを立てますが、それが飼い主さんの意向とずれている場合には遠慮せず伝えてください。愛猫の性格や気質を一番に理解されているのは飼い主さんです。愛猫にとって最善と思う形を選んであげてくださいね。

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